ヴィクトル・ユゴー

レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第五部 ジャン・ヴァルジャン ビクトル・ユーゴー Victor Hugo —–豊島与志雄訳

第五部   第一編 市街戦     一 サン・タントアーヌとタンプルとの両|防寨《ぼうさい》 社会の病根を観察する者がまずあげ得る最も顕著な二つの防寨は、本書の事件と同時代のものではない。その二つの防寨は、異なった二つの局面においていずれも...
ヴィクトル・ユゴー

レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌 ビクトル・ユーゴー Victor Hugo ——豊島与志雄訳

第四部      第一編 歴史の数ページ     一 善《よ》き截断《さいだん》 一八三一年と一八三二年とは、七月革命に直接関係ある年で、史上最も特殊な最も驚くべき時期の一つである。この二年は、その前後の時期の間にあたかも二つの山のごとくそ...
ヴィクトル・ユゴー

レ・ミゼラブル       LES MISERABLES  第三部 マリユス ビクトル・ユーゴー Victor Hugo ——-豊島与志雄訳

第三部 マリユス    第一編 パリーの微分子     一 小人間 パリーは一つの子供を持ち、森は一つの小鳥を持っている。その小鳥を雀《すずめ》と言い、その子供を浮浪少年と言う。  パリーと少年、一つは坩堝《るつぼ》であり一つは曙《あけぼの...
ヴィクトル・ユゴー

レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第二部 コゼット ビクトル・ユーゴー Victor Hugo ——豊島与志雄訳

第二部 コゼット 第一編 ワーテルロー     一 ニヴェルから来る道にあるもの 一八六一年五月のある麗しい朝、一人の旅人、すなわちこの物語の著者は、ニヴェルからやってきてラ・ユルプの方へ向かっていた。彼は徒歩で、両側に並み木の並んでる石畳...
ヴィクトル・ユゴー

レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第一部 ファンティーヌ ビクトル・ユーゴー Victor Hugo ——豊島与志雄訳

第一部 ファンティーヌ    第一編 正しき人     一 ミリエル氏 一八一五年に、シャール・フランソア・ビヤンヴニュ・ミリエル氏はディーニュの司教であった。七十五歳ばかりの老人で、一八〇六年以来、ディーニュの司教職についていたのである。...
ヴィクトル・ユゴー

レ・ミゼラブル       LES MISERABLES 改訳について    ———- 豊島与志雄

「レ・ミゼラブル」の翻訳を私が仕上げたのは、ずいぶん以前のことである。年少|菲才《ひさい》の身をもって事にあたったので、意に満たぬ点が多々あった。しかるに今度改訂の機会を得て、旧稿に手を入れてみた。  翻訳の仕事の難事であることは言うまでも...
ヴィクトル・ユゴー

レ・ミゼラブル LES MISERABLES 序—– 豊島与志雄

一七八九年七月バスティーユ牢獄の破壊にその端緒を開いたフランス大革命は、有史以来人類のなした最も大きな歩みの一つであった。その叫喊《きょうかん》は生まれいずる者の産声《うぶごえ》であり、その恐怖は新しき太陽に対する眩惑《げんわく》であり、そ...
アンデルセン

即興詩人 IMPROVISATOREN ハンス・クリスチアン・アンデルセン       Hans Christian Andersen 森鴎外訳

初版例言  一、即興詩人は※[#「王+連」、第3水準1-88-24]馬《デンマルク》の    HANS《ハンス》 CHRISTIAN《クリスチアン》 ANDERSEN《アンデルセン》(1805―1875)の作にして、原本の初板は千八百三十四...
アンデルセン

醜い家鴨の子 DEN GRIMME AELING        ハンス・クリスチャン・アンデルゼン       Hans Christian Andersen 菊池寛訳

それは田舎《いなか》の夏《なつ》のいいお天気《てんき》の日《ひ》の事《こと》でした。もう黄金色《こがねいろ》になった小麦《こむぎ》や、まだ青《あお》い燕麦《からすむぎ》や、牧場《ぼくじょう》に積《つ》み上《あ》げられた乾草堆《ほしくさづみ》...
アンデルセン

旅なかま REJSEKAMMERATEN ハンス・クリスティアン・アンデルセン       Hans Christian Andersen 楠山正雄訳

かわいそうなヨハンネスは、おとうさんがひどくわずらって、きょうあすも知れないほどでしたから、もうかなしみのなかにしずみきっていました。せまいへやのなかには、ふたりのほかに人もいません。テーブルの上のランプは、いまにも消えそうにまばたきしてい...