グリム

かえるの王さま DER FROSCHKONIG ODER DER EISERNE HEINRICH グリム兄弟 Bruder Grimm—–楠山正雄訳

一 むかしむかし、たれのどんなのぞみでも、おもうようにかなったときのことでございます。  あるところに、ひとりの王さまがありました。その王さまには、うつくしいおひめさまが、たくさんありました。そのなかでも、いちばん下のおひめさまは、それはそ...
グリム

おおかみと七ひきのこどもやぎ DER WOLF UND DIE SIEBEN JUNGEN GEISSLEIN グリム兄弟 Bruder Grimm—–楠山正雄訳

一 むかし、あるところに、おかあさんのやぎがいました。このおかあさんやぎには、かわいいこどもやぎが七ひきあって、それをかわいがることは、人間のおかあさんが、そのこどもをかわいがるのと、すこしもちがったところはありませんでした。  ある日、お...
カフカ

審判 DER PROZESS フランツ・カフカ Franz Kafka—–原田義人訳

[#ここから5字下げ][#ここから中見出し]第一章 逮捕・グルゥバッハ夫人との    対話・次にビュルストナー嬢[#ここで中見出し終わり][#ここで字下げ終わり] 誰かがヨーゼフ・Kを誹謗《ひぼう》したにちがいなかった。なぜなら、何もわるい...
カフカ

城 DAS SCHLOSS フランツ・カフカ Franz Kafka—–原田義人訳

第一章   Kが到着したのは、晩遅くであった。村は深い雪のなかに横たわっていた。城の山は全然見えず、霧と闇《やみ》とが山を取り巻いていて、大きな城のありかを示すほんの微かな光さえも射していなかった。Kは長いあいだ、国道から村へ通じる木橋の上...
カフカ

罪・苦痛・希望・及び眞實の道についての考察 フランツ・カフカ—–中島敦訳

1 眞實の道は一本の繩――別に高く張られてゐるわけではなく、地上からほんの少しの高さに張られてゐる一本の繩を越えて行くのだ。それは人々がその上を歩いて行くためよりも、人々がそれに躓くためにつくられてゐるやうに思はれる。2 すべての、人間の過...
カフカ

最初の苦悩 ERSTES LEID フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳

ある空中ブランコ乗りは――よく知られているように、大きなサーカス舞台の円天井の上高くで行われるこの曲芸は、およそ人間のなしうるあらゆる芸当のうちでもっともむずかしいものの一つであるが――、はじめはただ自分の芸を完全にしようという努力からだっ...
カフカ

皇帝の使者EINE KAISERLICHE BOTSCHAFT フランツ・カフカ Franz Kafka——原田義人訳

皇帝が――そう呼ばれているのだ――君という単独者、みすぼらしい臣下、皇帝という太陽から貧弱な姿で遠い遠いところへ逃がれていく影、そういう君に皇帝が臨終のベッドから伝言を送った。皇帝は使者をベッドのそばにひざまずかせ、その耳にその伝言の文句を...
カフカ

火夫 DER HEIZER——フランツ・カフカ Franz Kafka—原田義人訳

十六歳のカルル・ロスマンは、ある女中に誘惑され、その女とのあいだに子供ができたというので、貧しい両親によってアメリカへやられたのだが、彼がすでに速度を下げた船でニューヨーク港へ入っていったとき、ずっと前から見えていた自由の女神の像が、まるで...
カフカ

家長の心配 DIE SORGE DES HAUSVATERS フランツ・カフカ Franz Kafka—–原田義人訳

ある人びとは、「オドラデク」という言葉はスラヴ語から出ている、といって、それを根拠にしてこの言葉の成立を証明しようとしている。ほかの人びとはまた、この言葉はドイツ語から出ているものであり、ただスラヴ語の影響を受けているだけだ、といっている。...
ヴィクトル・ユゴー

死刑囚最後の日 LE DERNIER JOUR D’UN CONDAMNE ユゴー・ヴィクトル Hugo Victor 豊島与志雄訳

一           ビセートルにて  死刑囚!  もう五週間のあいだ、私はその考えと一緒に住み、いつもそれと二人きりでおり、いつもその面前に凍《こご》えあがり、いつもその重みの下に背を屈めている。  昔は、というのもこのいく週かがいく年...