マクラウド

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約束  フィオナ・マクラウド   Fiona Macleod—- 松村みね子訳

モイルの荒々しい水に洗われているアルバンの南方の王であったケリルが寂しい土地にたった一疋の猟犬をつれて一人で猟している時のことであった、ケリルはその時、同じ生命を持っている二人の生命は互に触れて一つになることがあるという事を見出した。  ケ...
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髪あかきダフウト       フィオナ・マクラウド       Fiona Macleod—- 松村みね子訳

グラッドロンがブリタニイを領していたアルモリカ人の王であった時、即ちアルヴォルの王であった時、彼の名にまさる名はなかった。ジュートやアングル族の住む北の海辺の砂丘から肌黒いバスクの漁師どもが網を投げてすなどりする南の方まで、グラッドロンの名...
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浅瀬に洗う女 フィオナ・マクラウド Fiona Macleod— 松村みね子訳

一 琴手トオカルがその友「歌のアイ」の死をきいた時、彼は三つの季節、即ち青い葉の季節、林檎の季節、雪の季節のあいだ、友のために悲しむ誓いを立てた。  友の死は彼を悲しませた。アイは、まことは、彼の国人ではなかった、しかしトオカルが戦場で倒れ...
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精  CATHAL OF THE WOOD フィオナ・マクラウド       Fiona Macleod—- 松村みね子訳

一「マリヤの僕カアル」と呼ばれていたアルトの子カアルは、青い五月のある夜、心にかなしみを持って海のほとりを歩いていた。  それは彼がイオナの島を離れてからまだ間もない時であった。聖コラムはこの青年をアラン島に送るにつけて聖モリイシャに手紙を...
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女王スカァアの笑い     フィオナ・マクラウド       Fiona Macleod— 松村みね子訳

強い女王スカァアが剣持つ手の掌に死の影を握って支配していたスカイの島をクウフリンが立ち去った時、そこには彼の美を惜しむなげきがあった。クウフリンはアルスタアの王コノール・マック・ネサの招きに依ってアイルランドに帰ったのであった。そのときレッ...
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最後の晩餐 フィオナ・マクラウド Fiona Macleod— 松村みね子訳

ふいと見た夢のように私は幾度もそれを思い出す。私はその思い出の来る心の青い谿《たに》そこを幾度となくのぞき見してみる、まばたきにも、虹のひかりにも、その思い出は消えてしまう。それが私の霊の中から来る翼ある栄光《ひかり》であるか、それとも、幼...
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剣のうた フィオナ・マクラウド Fiona Macleod— 松村みね子訳

ロックリンの海賊どもがヘブリッド島の鴉に餌じきを与えた時から三年目の、しろき六月とよばれる月に、夏の航海者たちは又もスカイの海峡を下って来た。  東風が山からあたらしく吹いて来た、明方と日の出ごろとのあいだにその風は向きを変えてクウフリンの...
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琴  フィオナ・マクラウド    Fiona Macleod —-松村みね子訳

コノール・マック・ネサの子コルマック、アイルランドの北の方ではコルマック・コンリナスという名で知られていたコルマックがアルトニヤ人の誓いのしるしの十人の人質の一人としてコネリイ・モルの許にあった時、彼はその力のため勇気のため又うつくしさのた...
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魚と蠅の祝日 フィオナ・マクラウド Fiona Macleod— 松村みね子訳

コラムは三日のあいだ断食した。口に入れるものとては、あけがたにひと口の割麦、ひるに一片の黒パン、日の入る頃に藻草のひと口といっぱいの泉の水、それだけであった。三日の夜、コラムの部屋にオランとキイルが来た。コラムは跪《ひざまず》いて一心に祈っ...
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漁師  フィオナ・マクラウド   Fiona Macleod— 松村みね子訳

シェーン婆さんは青々した草原の向うのほそい流れで馬鈴薯の皮むきに使う板を洗うとやがて自分の小舎に帰って来て泥炭の火の前に腰を下ろした。  婆さんはもうひどく年をとっていた。それに、真夏の日のいちにち、陽はよく当っていたけれど、山風は肌さむか...