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鼻—- ニコライ・ゴーゴリ —–平井肇訳

一 三月の二十五日にペテルブルグで奇妙きてれつな事件がもちあがった。ウォズネセンスキイ通りに住んでいる理髪師《とこや》のイワン・ヤーコウレヴィッチ(というだけでその苗字は不明で、看板にも、片頬に石鹸の泡を塗りつけた紳士の顔と、【鬱血《こり》...
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狂人日記 ZAPISKI SUMASHEDSHAWO    ニコライ・ゴーゴリ       Nikolai Vasilievitch Gogoli —–平井肇訳

十月三日  けふといふ日にはずゐぶん變なことがあつた。朝、起きたのはかなり遲かつたが、マヴラが長靴の磨いたのを持つて來た時、いま何時だと訊いた。すると、もうとつくに十時を打ちましたとの答へに、おれは大急ぎで身じまひをした。正直なところ、役所...
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外套 ニコライ・ゴーゴリ —–平井肇訳

ある省のある局に……しかし何局とはっきり言わないほうがいいだろう。おしなべて官房とか連隊とか事務局とか、一口にいえば、あらゆる役人階級ほど怒りっぽいものはないからである。今日では総じて自分一個が侮辱されても、なんぞやその社会全体が侮辱されで...
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ディカーニカ近郷夜話 前篇 VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI 紛失した国書(×××寺の役僧が語つた実話) PROPAVSHAYA GRAMOTA ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli —-平井肇訳

06  ぢやあ、もつとわしの祖父の話を聴かせろと仰つしやるんで?――よろしいとも、お伽になることなら、なんの、否むどころではありませんよ。ああ、何ごとも昔のこと、昔のこと! 遠い遠い、年代や月日のほども聢とはわかりかねる大昔にこの世にあつた...
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ディカーにか近郷や輪 前編 VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI 五月の夜(または水死女) MAISKAYA NOCHI, ILI UTOPLENNITSA ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳

05    とんとどうも分らない! 堅気な基督教徒が何かを手に入れようとして、まるで猟犬が兎を追つかけるやうに、あくせくとして骨を折つても、どうしても旨くゆかないやうな場合に、そこへ悪魔めが荷担して、奴がちよつと尻尾を一つ振らうものなら、も...
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ディカーニカ近郷夜話 前篇 VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI イワン・クパーラの前夜(×××寺の役僧が話した事実譚) VECHER NAKANUNE IVANA KUPALA ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli —–平井肇訳

04  フォマ・グリゴーリエ ヰッチには一種奇妙な癖があつた。あの人はおなじ話を二度と繰りかへすのが死ぬほど嫌ひだつた。どんなことでも、もう一度はなして貰ひたいなどと言はうものなら、きまつて、何か新事実をつけ足すか、でなければ、まるで似ても...
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ディカーニカ近郷夜話 前篇 VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI ソロチンツイの定期市 SOROCHINSKAYA YARMARKA ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli—- 平井肇訳

03  家のなかにゐるのは退屈だ。  ああ、誰か外へつれだしてお呉れ  娘つ子があそび戯れ  若い衆がうろつきまはる  賑かな賑かなところへと!            ――古伝説より――      一 小露西亜の夏の日の夢心地と、その絢爛《...
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ディカーニカ近郷夜話 前篇 VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI はしがき ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli—— 平井肇訳

02『まつたくこれは奇態な本だ、『ディカーニカ近郷夜話』か? いつたい 『夜話 』とはなんだらう? 何処かの蜜蜂飼かなんかがこんなものを世間へ発行《だ》しをつて! お蔭さまなことだよ! 羽根ペンを拵らへるのにどれだけ鵞鳥を裸かにし、紙を漉く...
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ディカーニカ近郷夜話 後篇 VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI 呪禁のかかつた土地(×××寺の役僧から聞いた実話) ZAKOLDOVANNOE MESTO ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli —-平井肇訳

05  いや、まつたく、もう話には倦きてしまつた! あなた方はどうお考へかしらんが、ほんとにうんざりしてしまふ。あとからあとから話せ話せで、捉まつたが最後、とんと、逃げ出すことも出来はせぬ。ぢや、まあ、お話をするが、もう金輪際、これがほんと...
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ディカーニカ近郷夜話 後篇 VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI イワン・ョードロヰッチ・シュポーニカとその叔母     IVAN FEODOROVITCH SHUPONIKA I EWO YOTUSHKA ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli —平井肇訳

04 これは、ガデャーチからよくやつて来たステパン・イワーノ ヰ ッチ・クーロチカに聞いた物語《はなし》ぢやが、これには一つの故事来歴がついてゐる。ところで、元来このわしの記憶といふやつが、何ともはやお話にならぬ代物で、聞いたも聞かぬもとん...